エレクトロヒート No.181
【巻頭言】
【特集】素材産業におけるエレクトロヒートシステム
経済産業省
製造産業局 素形材産業室
・「素形材産業」は日本の製造業を支える重要な
サポーティング・インダストリー
・世界経済の急速な減退や震災の影響等により「素形材産業」
は厳しい環境
・新たな成長のための取り組みが重要
・人材育成、雇用創出
・中小ものづくり企業支援
・技術・ノウハウ流出の防止
・素形材産業のエネルギー環境対策支援 等
・我が国の素形材産業は幾多の環境変化に直面するたびに
優れた問題対応能力を発揮
・今後も、自己改革能力を高めつつ、新しい未来を切り開くことを期待
阿部 容久
経済産業省
製造産業局 自動車課(自動車部品担当)
地球環境問題及び資源制約に対するグローバルな関心の高まりから、自動車分野においても、更なる燃費向上、CO2 の削減、燃料の多様化及び次世代自動車の本格的な市場導入への要請が強まってきている。我が国の自動車及び関連産業は、これまで高い技術力を背景として世界市場に受け入れられ、国内においても経済・雇用等を牽引するリーディング産業としての役割を果たしてきた。しかしながら、上記の通り、グローバルな競争が激化していく中で、今後ともその役割を果たし続けるためには、その潮流に乗り遅れることなく、新たな産業や市場を創造し、獲得していくことが不可欠である。このような問題意識から、経済産業省では、この度、自動車や関連産業及び社会全体の中長期的な対応のあり方に関する新たな戦略を構築するために、平成21 年11月より産官学のメンバーからなる『次世代自動車戦略研究会』を組織して検討を行い、平成22 年4 月12 日に『次世代自動車戦略2010』としてとりまとめ、公表した。本稿では概要と次世代自動車の普及に伴う素形材産業の変化について述べる。
丸尾 哲弘
富士電機サーモシステムズ株式会社
開発部 副部長
鉄るつぼをIH加熱するアルミ溶解保持炉を中部電力株式会社と共同開発した。装置は鉄るつぼを加熱する炉体とコイルに高周波電流を流すインバータ盤とで、構成される。アルミ保持容量200kg、保持温度670~720℃、溶解時電力20kWの仕様である。本装置は、次の特徴を持つ。
(1)省エネルギー化:使用一次エネルギーを22%削減
(2)作業環境の大幅改善:CO₂排出量を54%低減。
工場内の温度上昇の抑制。
(3)運転性の向上:溶湯温度±1℃の高精度制御可能。
(4)設置が容易:冷却水が不要で、3φ200Vの電源配線を
行うのみで運転可能。
(5)鉄るつぼの長寿命:鉄るつぼの減肉が少なく、鉄るつぼの
寿命は約4倍に延びる。
(6)湯漏れ時の保護:湯漏れを検知し、安全に自動停止する。
加熱コイルはモールドされており、湯漏れ時に保護される。
(7)溶解可能:固まったアルミの溶解も可能
棚橋 尚貴
中部電力株式会社
エネルギー応用研究所 都市・産業技術グループ
産業エネルギーチーム 研究副主査
鋳造工場では、多品種生産や生産量変動に対応するために運用が複雑化する傾向にあり、ライン全体のエネルギー消費のリアルタイム監視や管理手法の確立が望まれている。全体工程を適切に管理し、溶解と造型のタイミングを一致させることは、金属溶湯の保温時間短縮などエネルギーロス低減への有効な手段となる。
そこで、誘導溶解炉を使用する鋳鉄や銅合金の鋳造工場を対象に、日々の生産計画に基づく最適な溶解炉操業計画を自動作成し、操業状態をリアルタイムにグラフィック表示して工程改善を促すエネルギー利用効率化システム「MiELCAST(みえるキャスト)」を開発したので報告する。
上野 雅
関西電力株式会社
お客さま本部 エンジニアリング営業部門エンジニアリンググループ
(現在:南大阪営業所 岸和田お客さまセンター係長)
コンクリート二次製品の製造過程では、ボイラの生蒸気を養生庫などに噴霧して温暖湿潤環境を作ることでコンクリートの水和反応を早める「蒸気養生」という工程がある。
蒸気養生は温度が60℃の高湿度空間で実施されるが、要求温度が比較的低温であることから生蒸気を使用しなくともヒートポンプ給湯機による温水ミストで実施できる可能性があり、実現できれば蒸気養生工程の省エネ・省コスト・省CO2につながる。
そこで、ヒートポンプ給湯機による温水ミスト加湿機能と蒸気コンベクターによる加温機能を持ち合わせた「ハイブリッド養生システム」を開発し、フィールド試験により温湿度制御性評価・製品強度評価・消費エネルギー評価を実施して実用可能であることが証明されたので、そのシステムについて紹介する。
菅原 健一
株式会社サーマル
技術グループ
株式会社プレック様(ステンレス鋼製の精密部品製造)におけるシャフト製造工程と、同工程におけるエレクトロヒート(電気加熱)を用いた熱処理炉(間接抵抗加熱式水素雰囲気連続炉および間接抵抗加熱式熱風循環焼戻炉)の導入事例と効果(着色・溶着の減少、コスト削減、時間短縮等)について紹介する。
大城 宏康
特殊電極株式会社 環境技術室 課長
永田雄大
特殊電極株式会社 環境技術室
多くの工場では地球環境や地域住民との共生のために、様々な環境対策を行っている。そのひとつに脱臭がある。今回対象とした鋳造工場のアルミ低圧鋳造工程においては、発生する臭気に対して薬液式や燃焼式の脱臭装置を採用している事例が多い。しかしながら、これらの方法には様々な課題があるため、今回新たな脱臭装置の開発に取り組んだ。
アルミ低圧鋳造工程において脱臭のターゲットとなる臭気の成分は、主にクレゾール類、アミン類であり、何れの成分も水に可溶であるため脱臭方式には水洗浄式を採用した。通常、水洗浄式は定量排水を行うが、本脱臭装置は装置内に電気分解式の水質浄化部を取り入れ、水の循環使用を可能とした。
結果、アルミ低圧鋳造工程の臭気に対して非常に有効な脱臭能力が得られ、現段階において6か月間水を交換すること無く性能維持ができている。
以上より、本脱臭装置はアルミ低圧鋳造工程の脱臭に対して有効であることが確認できた。
【ヒートポンプ給湯講座】
【特別寄稿】
永田 悟
中部電力株式会社
技術開発本部 電力技術研究所
流通グループ 送変電チーム 主任
一般に合成樹脂は、成形が容易で、使用する目的・用途に合わせて様々な性能を有する樹脂が合成可能であり、幅広く利用されている。合成樹脂は高分子化合物からなる物質であり、原材料としては主に石油が用いられているが、石油資源の枯渇・地球温暖化といった地球規模の問題から、脱石油化を図ることが求められている。
こうした状況のもとで、近年では、家庭用品を中心に植物を原料とし、生分解性を持つ熱可塑性樹脂が開発・製品化されている。それに対し、重電分野等で使用される樹脂は、電気絶縁性に加え、機械的強度や耐熱性、耐久性も要求される熱硬化性樹脂であり、従来、植物を原料としたものの開発は困難であった。
今回、中部電力㈱と㈱明電舎は、植物由来原料と石炭火力発電の産業副産物であるフライアッシュを組み合わせることで、石油資源の使用を大幅に低減し、環境に配慮した熱硬化性樹脂を開発することに成功したので、その詳細を紹介する。
中山 道夫
スチールプランテック株式会社
技術開発センター 技術開発推進室 主席技師
先進国・発展途上国ともに鉄鋼蓄積量は漸増し、鉄スクラップを原料とする電炉製鋼の比率が増大している。また生活レベルの向上とともに亜鉛メッキ高級鋼板の使用量が増えて、廃車や廃家電由来の鉄スクラップの使用比率も増大してきた。 これにともない、電炉製鋼から発生するダスト中の亜鉛分や塩分、有機物の比率が増え、ダストの投棄にともなう環境上の問題や金属資源未回収の課題が表面化してきた。本稿では日本および海外の電炉ダスト処理(無害化と資源回収)の現状と、当社が台湾の嘉徳技術開発股份有限公司(KATEC)と共同で技術開発した溶融還元方式の電炉ダスト処理プロセスの概要を紹介する。
【寄稿】