エレクトロヒート No.175
【巻頭言】
【特集】遠赤外線加熱・マイクロ波加熱システム(電気加熱特集II)
木村 嘉孝
木村技術事務所
所長
遠赤外加熱には普通の加熱方法では見られないような優れた効果がありながら、その根拠がきちんと説明されていないまま、誤った解釈が流布し、それが一層学識者の反論を招いて、未だに完全な信頼を勝ち得ていないのは、真に残念なことである。これら識者の反論には、実はこれまた誤解に基づくものが少なくないのである。本論では、これらの誤った解釈とその背景を詳しく考察し、正しい解釈とその根拠を提言したい。あわせて実際のいろいろな応用面ごとに、その効果を可能にした遠赤外加熱の特徴や理由を明らかにしようと思う。
樫本 尊久
テーピ熱学株式会社
技術課 課長
各種製造ラインには、多くの加熱・乾燥工程が存在し、ワークの搬送方法もさまざまであり、また加熱・乾燥工程に使用される熱源・手法も加熱条件にあったものが使用され、その数は計り知れない。
その中でも遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法は、従来の方法からの転換により、効果が顕著に顕れることに特筆すべきものがあり、今後もこの遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法が見直されていくことを期待するものである。
弊社が納入した設備においても、各種の加熱・乾燥工程での改善に役立ち、評価を得ている。今回は、その中から印刷・塗装乾燥工程への設備導入事例および特徴・効果について紹介する。
瀧本 浩之
ダイキン工業株式会社
堺製作所金岡工場
空調生産本部商品開発グループ
人を暖めるための暖房器具には空気の対流によって部屋全体を暖める対流形、ふく射熱により暖めるふく射形と発熱体に直接触る伝導形がある。今回紹介させていただく遠赤外線暖房機セラムヒートは、ふく射形の暖房器具に分類されるものである。ふく射形の暖房器具は、ふく射熱で直接対象物を暖めるため、部屋全体を暖めるのには適さないが、部屋で働く人だけを暖めたい場合などに効率よく暖房が可能である。セラムヒートはこの特徴を生かし、大空間や半開放の工場などで働く作業者のみを暖められる、衝撃に強く、どこでも手軽に使えるコンパクトさと離れたところからでも暖めることができるふく射性能を備えた暖房機として開発された。
長 伸朗
中部電力株式会社
技術開発本部 エネルギー応用研究所
都市・産業技術グループ 研究副主査
過熱蒸気とは、沸点(大気圧下では100℃)より高い温度の乾いた水蒸気である。高速・均一な加熱が可能なことから、熱風に替わる新たな加熱媒体として近年注目を集めており、200〜400℃の過熱蒸気は食品調理や機械部品の洗浄等に活用されている。今回、350℃の過熱蒸気を発生できる電気式の過熱蒸気発生器を開発した。ハロゲンランプの採用により、従来より高効率・低コストで、高精度の温度制御性能および高い設置性を実現した。ここでは、開発したハロゲンランプ式高効率過熱蒸気発生器の概要を、適用例をまじえて紹介する。
米川 英樹
株式会社ノリタケカンパニーリミテド
エンジニアリング事業部 ヒートテクノ部
「リチウムイオン電池」は、1990年から携帯電話やパソコン等に使用されている二次電池である。近年では自動車用の二次電池として注目を浴びている。ハイブリッド車や電気自動車用途では生産性・品質がより重要視されるため、高性能で効率の良い量産設備が必須である。当社は、電極を製造する工程の一部となる塗工乾燥プロセスに注目し、熱媒式(防爆型)遠赤外線ヒーターを組み込んだ高効率乾燥炉を開発した。その結果、従来の熱風乾燥方式に比べて乾燥処理時間を大幅に短縮(2/3〜1/2に短縮)することに成功し、処理速度(ラインスピード)を1.5〜2倍にすることができた。また、遠赤外線加熱の効果が塗工膜乾燥後の仕上がりに寄与し、品質向上にもつながった。今回はその具体的な技術の概要を紹介する。
山田 吉昭
ミクロ電子株式会社
営業部
本文ではマイクロ波加熱をテーマとして、マイクロ波加熱の原理を簡単に説明し、その原理を応用した加熱装置の基本構造を紹介する。マイクロ波は通信やレーダーなどの情報伝達手段として長く利用されているが、加熱分野での利用も以外に古く、1945年にレーダー用マグネトロンの試験中に試験機の上に置いたキャンディが溶けたことをヒントに電子レンジが発明されたと言われている。現在では食品加熱用の電子レンジを始めとして、多くの工業分野でも様々なタイプのマイクロ波加熱装置が稼働している。ミクロ電子による各種マイクロ波加熱装置の実績を例にとり、代表的な構造例も併せて紹介する。
岡村 邦康
西光エンジニアリング株式会社
代表取締役
弊社は創業以来ニッチ業界向け特殊乾燥機を設計・製作・販売してきたが、現状の熱風や冷風乾燥では限界と思っていた「乾燥品の品質向上」と「ランニングコストの低減」を「マイクロ波加熱を併用する乾燥方法」により改善することができた。本稿では、中小企業を支援する制度である経営革新計画の承認を受けてマイクロ波加熱を併用する乾燥技術を習得した後、新連携事業計画及び農商工連携事業計画の認定、更に系列企業㈱沖友の地域産業資源活用事業計画の認定を受け且つこれらの制度を一元化して活用し、マイクロ波加熱を併用する紙管・帆立貝柱・モズク乾燥の専用機を実用化し、九州工業大学との共同研究によるマイクロ波減圧乾燥機の実用化に至った迄を述べる。
吉田 睦
富士電波工機株式会社
第一機器部 技術課 課長
弊社では半導体式マイクロ波電源(915MHz、2.45GHz、5.8GHz、10GHz)とアプリケータの製品化を行った。本稿では、半導体式マイクロ波電源とアプリケータ及び応用事例を紹介する。
従来の工業用マイクロ波装置では、電子管式(マグネトロン、クライストロン、ジャイラトロン)の発振素子を用いた電源が主に使われてきた。しかし近年各種研究が進むにつれ研究・開発部門向けに、半導体式マイクロ波電源が盛んに用いられている。半導体式マイクロ波電源は周波数や出力を任意可変し、変調を加える事が出来る。電源の主な用途としては、リチウムイオン電池やコンデンサ材料・太陽電池・燃料電池・創薬・医療・金属粉体・各種ガラス・セラミックス化合物・フェライト・SiC・カーボン・イットリアジルコニウム・各種ナノ粒子・各種新素材開発用等の加熱・乾燥・反応・化学合成・焼成・プラズマプロセスに用いられている。
アプリケータは磁界や電界を制御する事により、マイクロ波誘導加熱(IH加熱)やマイクロ波誘電加熱(DH加熱)が出来る。
山本 泰司
山本ビニター株式会社
代表取締役
高周波やマイクロ波による誘電加熱を利用した解凍は、食品の自己発熱による内部加熱であり、短時間に品温を高めることができるため急速解凍が可能である。しかし熱暴走によるホットスポットを発生させないように注意が必要である。マイクロ波は、解凍における熱暴走のリスクが高く、日本では主に高周波が利用されている。氷点より少し低い温度帯で、部分的にまだ氷の残る半解凍状態にすることを、完全解凍と区別してテンパリングと呼んでいる。高周波テンパリング装置として、少量生産用のバッチ式小型装置と、大量生産用の連続式大型装置の2種類が普及している。実例として、鶏肉の解凍、骨付き鶏肉の解凍、牛肉の解凍を紹介する。
【ヒートポンプ給湯講座】
【特別寄稿】
西辺 茂
タニコー株式会社
本社第二営業部 営業推進
マイクロ波炊飯機担当 理事
近年、「景気」「環境」「コスト」など、厳しい企業環境の中で『外食産業』を初めとする『老人介護施設』『病院施設』『食品スーパー』などの経営者の方々はあらゆる方面から『炊飯器』の見直しをされている。『食味の向上』は勿論の事、『コスト削減』『労務改善』など特に、環境問題では「省エネ法」が施行され避けて通れない重要な課題となっている。又、これの対処として『炊飯器』のハード面だけでなく、炊飯オペレーションの有り方、『お米』の「普通精米」か「無洗米」かの検討も不可欠と言える。今回ご案内する【マルチ対応マイクロ波炊飯機】は各方面でご採用頂いた方々の「きっかけ」「導入後の感想」など、生の声をご紹介するもので、『お米』の情報も併せてご紹介する。