エレクトロヒート No.173
【巻頭言】
【特集】病院・学校・福祉施設におけるエレクトロヒートシステム
馳平 心
東京電力株式会社
千葉支店 営業部 ソリューション第二グループ 課長代理
病院施設は医療サービスを提供するにあたり、緊急性、公共性が高くいかなる場合においても不断のサービス提供が重要であると共に、エネルギー消費密度が高く資源エネルギー多消費型施設と考えられている。また一方では、環境社会を構成する一員として地球温暖化・廃棄物問題等おける環境負荷低減に向けた取り組みを行うことも大変重要である。本稿ではエネルギー供給事業者の立場から「3つの循環(Cycle)と継続(Continuity)」をキーワードとして、地球温暖化・廃棄物問題等における環境負荷低減と病院機能維持に配慮した「サスティナブルホスピタル」の実現を目指した提案を行った。
塚見 史郎
株式会社日建設計
設備設計部門設備設計室 主管
渡邉 賢太郎
株式会社日建設計
設備設計部門設備設計室 室員
足利赤十字病院は、移転新築にともないこれまで遅れていた病院の省CO2化に積極的に取り組んでいる。高効率熱源として、セントラル熱源は空冷ヒートポンプチラーや井水熱回収ヒートポンプチラーによる水蓄熱方式、個別熱源は井水熱を利用した水熱源パッケージエアコン、給湯は井水熱回収ヒートポンプチラーによる大規模な深夜電力給湯を採用する等、自然エネルギー利用により機器の高効率化を図り省CO2の実現を目指している。また風力発電や太陽光発電も導入し、省CO2効果の見える化を行うことで地域住民や患者、職員へのエコ啓発も計画している。新病院は従来病院と比較して年間のCO2排出量を4,300t-CO2/年削減できる試算となった。このような取組みが評価され足利赤十字病院は第1回住宅・建築物省CO2先導事業に採択された。
安達 忠司
東北電力株式会社
お客さま本部 お客さま提案部
エネルギーソリューショングループ コンサルタント
平成9年の秋、水沢市(現、奥州市)の真城学校給食共同調理場施設の電化のご提案書を作成して関係部署にご説明とご協議を重ねて導入決定となりました。1日の給食数が600食で将来は1,000食対応の増設予定の施設でした。これが平成10年に稼動して現在の平成22年では弊社管内においても、60ヶ所の導入が間近に迫ってきております。給食数も300食〜1,000〜4,000食まで多種多様です。11年間の期間は4,000日に近い日数です。奇しくも今回4,000食の久慈市学校給食センターさまのご紹介は、私にとって感慨深いものがあります。現在までの導入施設においても走馬灯のように思い出されてきましたが「時代のニーズを先取り」するこの施設が環境負荷の低減に留意された弊社管内最大給食数の施設紹介とするしだいです。
岩手 三千男
株式会社四電工
徳島支店 営業部 ECO提案センター 主任
日本私立大学団体連合会や日本私立中学高等学校連合会など私学五団体で構成している全私学連合は,CO2の排出量を2007年度を基準に2012年度まで毎年,前年度比1%削減することを目標に環境自主行動計画を策定し,地球温暖化対策に向けた様々な取り組みを実施することとした。このような中,同団体に加盟する徳島文理大学も地域社会において公共性を有する大学施設として,エネルギーの有効利用・環境負荷の低減への取り組みを率先・実行することが重要かつ責務であるとの認識から,ヒートポンプを活用した高効率空調機への更新や空調一括監視システムの導入,また,熱搬送設備の変更他,各種施策を実施したことにより,徳島キャンパスで年間13%の省エネ化とともに,14%のCO2排出量削減と約2,000万円のエネルギーコストの削減を見込んでいる。
小俣 雅邦
日本ファシリティ・ソリューション株式会社
第一営業本部 ソリューション営業第一部 アシスタント・マネージャー
本年4月より開始された東京都における環境確保条例(CO2総量削減義務と排出量取引制度)の施行や,エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の改正等,「CO2排出量の削減」や「省エネルギー対策に向けた取組み」の必要性・重要性はますます高まっている。なかでも,民生用分野での省エネルギー対策は喫緊の課題となっており,大学などの学校法人では「エコキャンパス」や「大学等の社会的責任(USR:University Social Responsibility)」などといった概念のもと,地球温暖化対策や省エネルギー化への取り組みが加速している。そこで本稿では,ESCOスキームを活用したCO2排出量削減対策と,その取組み事例として学校法人実践女子学園実践女子大学様を紹介する。本ESCO事業においては,毎年,キャンパス全体の約20%に相当する320t-CO2/年ものCO2排出量が削減できる見込みである(平成17〜19年度における3ヵ年平均との比較)。
関 光一郎
東芝キヤリア株式会社
営業企画部 販促担当
エネルギー資源の効率的利用とCO2削減が全世界で有用課題となっている。その中で、世界の空調市場では地球環境にやさしく、また高い効率性と快適性を実現する空調機器への関心・需要がますます高まっている。医療業界においても二酸化炭素排出量の削減など省エネルギー対策が重要視されている。対策を目的としたリニューアルの実施が、ランニングコストなど経費の削減につながることで環境対応と経費削減を両立できることから、燃焼式熱源からヒートポンプに切り替える方式が注目されている。さらに実施にあたっては補助金制度やエスコ事業の活用によりリニューアル費用を抑えることが課題となる。こうした課題解決を実現する高効率ヒートポンプ熱源機「スーパーフレックスモジュールチラー」を活用した事例を紹介する。
宮坂 隆美
サクラ精機株式会社
洗浄滅菌事業本部 副本部長
スチームセル「SCII;蓄熱式蒸気発生装置」の発売開始から約10年が経過した。今日に至る経過では紆余曲折もあったが、近年になって漸く市場が開けてきた感じがする。要因は「二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減のために化石燃料の使用を減らし、同時に適正価格でエネルギーの安定供給を実現する」という主要各国の合意の中、待った無しの温暖化防止対策の中でも、特に「CO2削減」対応のためにオール電化病院の有効(利)性、各種展示会でのPR活動等が効を奏したのか、各電力会社の医療関連等のご担当者様からお声がかかるようになり、沖縄電力様を除く9電力会社様とコンタクトが取れた。全国的に「新築・増改築含むオール電化病院」の計画や導入に向けて前向きだ。弊社として、「2010年はオール電化病院元年」といえるエポック/トリガーの年と位置付けた。2009年NO,164で、弊社及び滅菌装置の歴史等を記載したが、本稿では環境問題のお浚いと、SCS「蓄熱槽一体型滅菌装置(SCS-B2600)」関連を中心に紹介する。
山口 雅道
三機工業株式会社
中国支店 建設設備技術部 設備技術課 設備技術課長
下関市立豊北中学校は,下関市豊北町内の4つの中学校が統合され平成18年4月に開校した。生涯学習の拠点として図書スペースなどを地域に開放している当中学校は,地域環境と共生するエコスクールとしての顔も備え,地中熱を利用した空調システムや高効率照明器具等の省エネルギー設備を導入している。地中熱を利用した空調システムによる省エネ効果は,開校後の一年間で一次エネルギー38.5%削減,CO2発生量40.9%削減の実績を上げている。
堤 勝彦
株式会社三機サービス
環境事業部 推進室長
今回の事例は、空調のメンテナンスサービスを主業とし、総合的な省エネ提案を行なっている弊社が施工した省エネ熱源機更新工事である。空調用に灯油焚の吸収式冷温水機、給湯用に同じく灯油焚の真空ボイラーを使用していた実恵園様では、古くなったこれらの熱源機の修繕費が増えてきている上に灯油の高騰でランニングコストが激増して困っていた。そこで、空調及び給湯の熱源機を電気式のヒートポンプ方式に更新することで、ランニングコストが飛躍的に減少するという提案をして導入に至った。その後、灯油高騰は一旦収まったが、今後も次第に高騰してくることは明白であるので、ここに、その効果の程を紹介することでCO2排出量の削減と経費削減の両方の観点から、油焚の熱源機から電気式のヒートポンプへの更新が普及していくことを期待する。
【ヒートポンプ給湯講座】
【特別寄稿】
鳥居 伸行
関西電力株式会社
お客さま本部 エンジニアリンググループ 主査
土山 公平
関西電力株式会社
お客さま本部 エンジニアリンググループ 副部長
土山 勝禎
関西電力株式会社
お客さま本部 エンジニアリンググループ 副長
日高 健児
関西電力株式会社
お客さま本部 エンジニアリンググループ
イオンモール草津ショッピングセンターで高効率チラーと氷蓄熱による大温度差空調システムを設計し、その実績データを検証した。熱源システム(熱源機+補機(冷却水P+冷水P+ブラインP+冷却塔ファン))のCOPは70%部分負荷運転時が最も高効率であった。したがって、70%運転を最優先にするよう熱源機運転台数、氷の放熱量を調整する運用パターンを計画した。これにより、空調一次側システム全体でのCOPは4.02となり、他物件と比較して省エネルギー性が高いことを実証した。
田村 彰紹
四電エナジーサービス株式会社
高知支店 営業課 主任
魚市場では鮮度が重視されます。漁船は、鮮度を保つため漁場から港に戻るまでの間、冷たい海水で満たした船倉を冷蔵庫として使用するのですが、田野町漁港は奈半利川河口から数百メートル上流にあり海水と淡水が混じり合うため安定した塩分濃度の海水が取水できず、また魚の鮮度保持を氷だけに頼っていたため「冷海水供給システム」の導入が望まれていました。本システムは、安定した塩分濃度(3%)の海水を汲み上げ割安な深夜電力を利用し夜間に3℃まで冷却貯蔵して、いつでも漁船や市場に冷海水を供給できるもので高い鮮度保持が期待できるほか、大幅なランニングコストの削減がはかれるものです。
【会員紹介】
土谷 輝男
森松工業株式会社
事業本部 企画開発室 係長
化石エネルギー燃焼によるCO2排出の削減、安価な深夜電力を利用したエネルギーコストの削減といった時代の要求に応えるため、家庭用のみならず、大型の業務用給湯システムにおいても、ヒートポンプ給湯システム方式が急速に普及している。特に夜間電力を利用した蓄熱主体のシステムにおいては、貯湯タンクの容量が比較的大きくなることもあり、開放式タンクを利用するシステムも一般的になってきた。衛生的で耐久性が高いといわれるステンレス鋼板を利用したパネルタンク(溶接型)を業界に先駆けて開発した当社では、タンクの放熱によるエネルギー損失をできるだけ少なくする構造で、より蓄熱性能を高め、システム全体のエネルギーコストメリットに貢献できる開放式タンクの供給に取り組んでいる。