日本エレクトロヒートセンター

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エレクトロヒートNo.172

 エレクトロヒート No.172

 

 

【巻頭言】
 
 

一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 理事
沖縄電力株式会社 お客さま本部 ソリューション営業部長
仲村 輝雄

 

 

【特集】食品製造業におけるエレクトロヒートシステム
 
 

草地 道一

オフイス・クサチ クリエイティブ インターナショナル
代表

わが国は近年、長寿国として世界各国から注目されている。戦前まで「一汁一菜」とも言われる穀類と野菜、芋類、豆類などを主な食材として低カロリーで質素な食事を摂って生活してきた。戦後のわが国高度経済成長とともに、医療技術の向上と施設の普及、欧米化した食生活の普及によるバランスのよい栄養素摂取、生活環境の改善などにより平均寿命は長寿化してきた。食生活改善では戦後の牛乳・乳製品の普及が大きく寄与しており、近年の健康志向の高まりはヨーグルトの乳酸菌によるプロバイオテクス(人体に良い影響を与える微生物が消化管内の細菌叢を改善し有益な作用)への認識の高まりもあり、ヨーグルト市場が拡大している。古くはヨーグルト(発酵乳)も特有の発酵臭や酸味があるため風味が好まれず、消費量も少なかったが健康志向の高まりから世界的に消費量が増加している。特に好まれているフルーツ・ヨーグルトの原料である果実加工品(フルーツ・プレパレーション)の製造には従来からの火熱、蒸気熱、電熱などではなく、電極による通電加熱方法が活用され、原料果実の風味、色調を損なわずに品質の良いヨーグルト原料が製造されているので紹介する。

 

 

 

高橋 正好

独立行政法人産業技術総合研究所
環境管理技術研究部門 水環境工学研究グループ 主任研究員 博士(工学)

マイクロバブルやナノバブルと呼ばれる微小気泡が注目を集めている。これらは基本的には「小さな泡」というだけの存在であるが、通常我々が知っている気泡とは全く異なった特性を有している。また、これを利用することで水処理や天然環境の環境改善、農水産業、医療、食品、半導体産業などの非常に広範囲で有効な技術として確立することができる。本稿ではマイクロバブルやナノバブルの基礎について簡単に紹介するとともにその応用事例についても検討してみる。

 

 

 

山本 和貴

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
食品工学研究領域 食品高圧技術ユニット 博士(農学) ユニット長

高圧力を利用して食品に各種の変化を引き起こす食品加工技術について解説した。食品高圧加工の歴史的経緯に触れ、圧力処理の食品加工上の特徴としての均一処理、化学反応抑制と物理的変化誘導、断熱圧縮・膨張を取り上げた。それに続き、高圧処理で誘導される物理的変化として、物性変換が期待される澱粉・蛋白質・油脂の変性、高圧処理で可能な凍結・解凍、低アレルゲン化、二枚貝の開殻・脱殻を解説した。更に、食品の安全性確保の上で重要な微生物的変化の議論を加え、最後に、食品高圧加工の実際として装置、安全性、コストについて議論した。

 

 

 

星野 明

株式会社フロンティアエンジニアリング
つくば研究所 専務取締役

現在、食品の加熱方法として広く使用されている方法を大きく分けると、外部加熱方式と内部加熱方式の二つに分類される。外部加熱方式とは、伝達(対流)、伝導、輻射熱などにより食品を加熱する方法であり、蒸気や熱水などの熱楳を使用した加熱方法である。外部加熱方式の代表的な装置は、蒸気を使用した蒸し機や加熱釜(ニーダー)、液体食品等の殺菌装置として使用されるプレート式や二重管式、掻き取り式熱交換器など、多くの食品の加熱装置として使用されている。また、内部加熱方式とは、伝達、伝導、輻射熱などのように外部に熱楳を一切もたず、食品自体を自己発熱させて加熱する方法である。代表的な装置としては、マイクロ波加熱装置などがあり、一般家庭などでも電子レンジとして多くのひとに使用されている。ジュール加熱技術は内部加熱方式に分類され、食品自体を自己発熱させ調理や殺菌を行う加熱方法である。
日本のジュール加熱技術自体は古くからあり、戦後まもなくパン焼き機などに使用され、水産食品業界では、水産練業界や佃煮業界などで使用されていた。しかし、当時のジュール加熱装置の完成度は低く安全対策や電極の腐食等などさまざまな問題点を抱えていたため使用されなくなっていた。しかし、近年機械装置の性能向上とともにさまざまな食品業界でジュール加熱技術が使用されるようになり、古くて新しい技術として現在も研究開発が進められている。

 

 

 

前川 浩司

四国計測工業株式会社
マイクロ波反応装置開発プロジェクト プロジェクトリーダー

才谷 明宏

四国計測工業株式会社
マイクロ波反応装置開発プロジェクト 副主査

マイクロ波の工業利用については、レーダー、ゴムの加硫、乾燥、殺菌、医療関係などで幅広く実用化されている。最近では、化学反応系にマイクロ波を応用することで反応速度が1ないし3桁ほど向上することや、特異な立体・位置選択制が見られることが明らかになり、広範な化学プロセスへの応用の可能性がでてきている。マイクロ波を利用した高分子合成プロセスを初めて実現した工業用マイクロ波装置、および当社のマイクロ波装置への取り組みについて紹介させて頂く。

 

 
 

河村 和彦

中部電力株式会社
技術開発本部 エネルギー応用研究所 都市・産業技術グループ
産業エネルギーチーム 研究副主査

えびせんべいには、焼き上げ後に味付けを行うもの(味付けえびせんべい)があり、従来は、焼き上げたえびせんべいとタレを回転ドラムに投入して味を付けた後に、ガス・灯油による燃焼式熱風乾燥室に移し替え、長時間かけて乾燥させていたが、回転ドラムでの味付け時や乾燥室への移し変えなどの際の衝撃で、えびせんべいに多くの割れが発生していた。特に、大判の高級えびせんべいは割れ易く、機械による量産が困難であった。今回開発した「連続式えびせんべい味付け乾燥機」は、コンベア上のえびせんべいにスポンジローラでタレを付け、コンベアに乗せたまま乾燥室を通す連続方式を採用することで、割れの発生が大幅に低減した。また、赤外線と熱風を併用した電気式乾燥方法を採用したことで、乾燥時間が大幅に短縮した。本稿では開発した連続式えびせんべい味付け乾燥機の特長とフィールド試験結果などについて報告する。

 

 

 
 

相馬 隆之

三和厨理工業株式会社
営業部長

回転釜は大量調理の厨房(学校給食・病院給食・福祉施設・社員食堂・セントラルキッチン等)で炒め物・茹で物・煮物・蒸し物・スープ・ソース等を調理するために必要不可欠の万能調理器であり、従来熱源はガスか蒸気が主であったが労働環境・衛生・ランニングコスト面で問題がありこれらの問題の改善を目的に電化が進んでいる。食品工場でも加熱加工の熱源は主にガスか蒸気で大量調理の厨房と同じ問題を抱えており、食の安全が叫ばれる中その改善は事業者にとって急務となっている。本稿では弊社製電気回転釜の特徴と、この電気回転釜を菓子工場に導入し問題解決に大きな成果をあげた岐阜市の山中製菓様・姫路市の常盤堂製菓様の2事例を紹介し、併せて今後の展開を述べさせて頂く。

 

 
 

斉藤 修吾

テーピ販売株式会社
機器営業部 主幹

世界一堅い食品である鰹節を軟らかくする装置が、遠赤外線焼軟機です。鰹節は魚偏に堅いと書きますが、文字通りその堅さのため、削りにくく、うまく削り節になりません。少し軟らかくすると、削りやすくなり、きれいな削り節ができあがります。そこで加熱をして、鰹節を軟化させます。温度をあげることにより、殺菌にもなります。また遠赤外線で加熱することにより、色や香りが良くなり、乾燥が進むなど、多くの利点もあります。弊社の遠赤外線焼軟機は自動削り装置の前行程に設置され、多くの削り節製造メーカ様にご利用いただいております。

 

 

千田 憲雄

日本ハイコム株式会社
企画開発事業部 次長

油で揚げない油揚げを生産するノンフライオーブンを開発した。油揚げ用生地を植物油に浸漬して表面に油をコーティングし、その後、過熱水蒸気と遠赤・熱風を組合せたオーブンで焼き上げる方式である。この結果、油揚げに含まれる油脂分を大豆の油脂分をも含め1/2以下に削減することができた。また、マイクロ波と過熱水蒸気を組合せた調理装置をも開発した。

 

 

【ヒートポンプ給湯講座】
 
 

株式会社Q研技術士事務所

代表取締役

杉村 允生

 

 

【特別寄稿】
 
 

原田 光朗

東京電力株式会社
法人営業部 産業エネルギーソリューション部 部長
スペシャリスト(蒸気レス空調のエンジニアリング)

空気調和設備のCO2削減対策として、「ヒートポンプ+気化式加湿」空調システムが注目されている。外気をヒートポンプで加熱し気化式加湿器(Evaporative Humidifier)で加湿する方法で、化石燃料の燃焼や蒸気がなくても加熱・加湿できる事から、一部ではボイラレス空調とか蒸気レス空調とも呼ばれている。本稿では、「ヒートポンプ+気化式加湿」システムの着眼点・メリット・その構造を紹介する。ならびに事例検討として製薬工場用外調機を取り上げ、「ヒートポンプ+気化式加湿」システムと従来方式との比較を行った。最後に、本方式に関連して現在進行している開発取組みについてもご紹介したい。

 

 

【会員紹介】
 

 

石田 浩文

株式会社ハウステック
事業本部 担当部長

当社は1963年に日立化成工業株式会社の住宅設備機器事業部として誕生し、40年以上にわたり、その歴史を築き上げてきた。2009年には日立グループから独立して社名をハウステックに改称したが、今後もそのものづくりの伝統や、技術・知恵にいっそうの磨きをかけ、お客様の価値観はもちろん、地球環境にも寄り添った新しいアイデアにもとづく商品開発によりお客様の『かしこく住まう』をサポートし続けて行く。今回、総合住宅設備機器メーカとして当社が行なってきたエコキュート開発に関してその一部を紹介するものである。

 

 
 

中野 守

株式会社リケン環境システム
熱エンジニアリング営業部 部長

Eco Thermal Technology (エコ・サーマル・テクノロジー)とはリケン環境システムがこれからの低炭素社会を実現するために提供する技術の総称である。抵抗加熱において、最新の熱解析技術や材料に関する基礎技術を駆使して、加熱においてヒーターとワークのマッチングを最適化することにより熱効率を改善し、更に発熱体の選定から熱流体の解析など最新の工業炉を設計、提案する技術である。熱処理を提案する上で顧客が要求する仕様をクリアーするのは当然であるが、加えてCO2削減がどのぐらい可能か、エネルギーコストはどのぐらい削減出来るか、スペースはどのぐらい小さく出来るかなどを数値化して提案する。