エレクトロヒート No.169
【巻頭言】
【特集】素形材産業におけるエレクトロヒートシステム
経済産業省 製造産業局素形材産業室
●「素形材産業」は日本の製造業を支える重要なサポーティング・インダストリー
●世界経済の急速な減退の影響等により「素形材産業」は厳しい環境
●新たな成長のための取り組みが重要
・人材育成、雇用創出 ・中小ものづくり企業支援
・技術・ノウハウの流出の防止 ・素形材産業の環境対策 等
●我が国の素形材産業は幾多の環境変化に直面するたびに優れた問題対応能力を発揮
●今後も、自己改革能力を高めつつ、新しい未来を切り開くことを期待
楯 恒夫
コーテック株式会社
塗装工場を調査した結果、多くの塗装乾燥炉はエネルギー効率が40%以下であると予想される。一方でそれは50%以上の省エネ・コストダウンの可能性が埋もれた宝がそこにあることを意味している。
環境の観点からも、収益性の観点からも乾燥炉の効率化・コンパクト化が急務となっている。また、そのことでCO2排出量を25%削減できる可能性も十分にある。今回は、現状の乾燥炉のムダを徹底的に排除し、現状の乾燥炉の温度曲線・加熱能力を分析し、小さな改造レベルで効率アップできる具体策を考えてみたい。
荻原 弘之
足利工業大学
大幅な温室効果ガスの削減に向けた取り組みが議論されている中、利用者側で温室効果ガスの排出量が少ない熱エネルギー源として、電力周波数の有効利用の一分野である高周波誘導加熱技術が脚光を浴びている。誘導加熱は、加熱効率が高く安全でクリーンであり、省エネルギーと地球環境に優しい熱源として時代のニーズと合致し、重要性が増している。応用分野は、用途と動作周波数、出力電力によって多種・多様であり、今では金属製品の熱処理等に止まらず幅広い分野にも進展し、今後更なる異業種への拡大・発展が見込まれる。本稿では、地球環境問題の改善に貢献し、新展開を遂げる誘導加熱技術の概要を紹介する。
遠藤 茂
JFEスチール株式会社
多賀根 章
JFEスチール株式会社
日野 善道
JFEスチール株式会社
水野 浩
JFEスチール株式会社
諏訪 稔
JFEスチール株式会社
鉄鋼材料の製造プロセスは、省エネルギーの観点などから連続化(オンライン化)が進んでいる。JFEスチールは、従来、オンライン化されていなかった高強度厚鋼板の製造に必須となる材質調整のための焼戻し熱処理のオンライン化を目指し、誘導加熱方式を用いたオンライン熱処理技術を確立した。
中井 靖文
富士電子工業株式会社
渡邊 哲正
富士電子工業株式会社
花木 昭宏
富士電子工業株式会社
地球への環境負荷の低減を考えた場合、エネルギーを大量に消費する金属熱処理のプロセス革新は重要な課題である。各種熱処理・表面硬化法の中でも、ワークを直接加熱(自己発熱)する誘導加熱は炉加熱を代表とする他の間接加熱と比べ、環境・省エネ対策として非常に効果的で、高周波焼入れによる部分的な硬化・大物製品の表面硬化の場合、更にその効果は大きくなる。また、燃焼に伴うCO2、大気汚染物質の発生が殆どなく、作業環境もクリーンなことから、特に近年、環境に優しい熱処理方法として注目されている。本稿では、環境負荷低減という面から、他の熱処理からの切替えによる効果及び当社固有高周波焼入れ技術と従来手法のエネルギー使用量やCO2排出量などを比較紹介させて頂く。
インダクトグループ株式会社
電気、ガス、化石燃料による加熱を比較したとき、ビレット誘導加熱の大きな利点の一つとして、要求された温度まで、より早く達し、加熱された温度の持続時間が短いということが挙げられる。だが、課題の一つとして、「表面-中心」の温度分布の均一化が挙げられる。
誘導による熱・温間鍛造前ビレット/バー加熱におけるオーバーヒート発生のメカニズムと問題点、またそれを解決するために求められる誘導加熱装置の特性について述べる。
阿部 範良
株式会社デンコー
この度、国の進める「脱炭素社会へ」の指針の下で、省エネ・CO2排出削減を行うことは、「時代が要求する緊急の課題」であるとの強い認識を持って、日本鍛造協会の指導のもと「ハイブリッド熱源(IH+IR加熱)による鍛造ライン用複合加熱システムの開発」を、当社の最重要開発アイテムと位置付け、進めている。
近未来の我が国熱処理業界の飛躍にとっても熱処理製品のコスト低減や機能・品質向上は最緊急課題であると認識しており、それらの解決手段として工業製品熱処理の歴史にもある「熱処理プロセスに於ける各工程での素材やデバイスの温度安定化」が重要な鍵を握ると考えており、従来の単一熱源加熱手段からハイブリッド熱源加熱手段への転換は、この壁を越えることのできる、現時点に於ける唯一の解決手段である。
辻野 二朗
北海道電力株式会社
山崎 勳
北海道住電精密株式会社
嶋田 志郎
北海道大学
熱プラズマプロセスは我々が1万度程度の超高温を利用できる唯一ともいえる工業的プロセスであり、これまでに溶解炉や溶射などで広く使われてきた。筆者らは金属アルコキシド溶液をAr/N2熱プラズマ中に噴霧、分解し800℃以下の基板上で結晶化させる新規な熱プラズマCVD法を開発して、様々な窒化物、炭化物、ホウ化物、酸化物を作製してきた。本稿では本プロセスを切削工具のコーティングへ適用して従来の熱CVD膜と同等以上の優れた耐摩耗性が得られたため、その実験結果や特長について紹介する。
【ヒートポンプ給湯講座】
【特別寄稿】
原田 光朗
東京電力株式会社
空気調和設備のCO2削減対策として、「ヒートポンプ+気化式加湿」方式が注目されている。
外気をヒートポンプ(以降HPと略す)で加熱し気化式加湿器(Evaporative humidifier)で加湿する方法で、化石燃料燃焼や蒸気がなくても加熱・加湿できる事から、一部ではボイラレス空調とか蒸気レス空調とも呼ばれている。
本稿では、気化式加湿器ならびに「HP+気化式加湿」システムに関して、皆様から頂く事の多い質問へ回答すると言う形をとりながらご紹介する。
ならびに本方式に関連して現在進行している開発の取組みについてもご紹介したい。
中原 光久
九州電力株式会社
磯野 一智
株式会社朝日工業社
本田 重夫
株式会社朝日工業社
施設園芸は、作物に積極的な環境調節を行うことで、生産の高度化・効率化・安定化を目指してきた。その中でも、作物の生育に大きな影響を与える環境要因の一つとして温度のコントロールである。
温度調節は、冬期の加温を目的として発達してきたが、施設の高度化と施設費の増大に伴って、施設の高度な周年利用を進める要求が高まり、夏期を中心とした高温抑制や端境期出荷(出荷調整)を目的とした低温性作物の栽培安定化や花芽分化促進のため導入するケースが多くなってきた。
近年、ヒートポンプを導入する事例がみられるが、冬季の暖房が主体で、夏季には一部の期間のみに利用するなど、年間を通しての利用効率が低い状況にある。そのため、利用効率の高い、施設園芸分野で周年利用できる空調装置の開発研究に取り組み、「蓄熱式充填空調システム」のプロト機を試作し、年間運転によるデータの収集及び植物工場に適する空調システムの検討を行った。
冬季は温水蓄熱、夏期は冷水蓄熱及び中間期は井水を利用した蓄熱式充填空調システムの局所空調の性能評価で、夏期条件では、浸出ダクトと間仕切壁を利用した局所空調方式が有効に機能していることを確認した。また、中間期には井水と換気運転により外気の最高温度が30.6℃時でも、栽培ベッド廻りは28℃以下に維持できた。
【会員紹介】
井手 武雄
富士電波工機株式会社
弊社は昭和23年に設立されて以来、ひたすら高周波工業加熱分野を歩み続け、より良い製品への改良、より高度な応用への開発、研究を重ねてきた。その成果は数多くの工場、研究所において高く評価され、絶大な信頼をもって御使用いだいている。省エネ、省力化、そして省資源や地球環境の保護に貢献できる高周波誘電、誘導加熱、マイクロ波加熱について、是非この機会に御検討いただきたい。