日本エレクトロヒートセンター

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エレクトロヒートNo.168

エレクトロヒート No.168

 
【巻頭言】
 
 

一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 副会長
香川 次朗

 

 

【特集】農業・水産業におけるエレクトロヒートシステム
 
 

林 泰正

ホルトプラン株式会社

星 岳彦

東海大学

施設園芸や植物工場の自動化・情報化・高度化を目的に、EthernetやXML等汎用技術を応用して、ユビキタス環境制御システム(UECS)が開発され、活用され始めている。UECSは、自律分散制御方式を採用しており、拡張性・柔軟性・耐故障性に優れる。従来農業施設であまり利用されなかったヒートポンプや電気利用機器などの装置やセンサを利用・応用可能にし、他機器と連携動作し効率的運用を可能とし、例えば施設全体の省エネ動作も可能となる。データ取得の容易性により、応用ソフトウェアを発展させデータ活用農業を実現でき、これにより「経験とカン」農業から、データに基づく「サイエンス」農業に移行し易くなる。また、オープンフォーマットで、複数機関が同時開発可能な性質を持ち、農業生産技術の向上を短期間で実現可能な可能性がある。これら性質によって、日本の農業技術を飛躍的に向上させ、食料自給率の向上並びに、生産者の収益増大に貢献したい。

 

 

 

石田 豊

株式会社四国総合研究所

特定波長の光を用いて植物の病害を防ぐ『光防除』を目指し、緑色光照射による病害防除技術を開発した。緑色光の照射は、植物に対して一種のストレス刺激となり、病害抵抗性の誘導を引き起こすと考えられ、イチゴ炭そ病をはじめとする各種果菜類や花卉類の炭そ病や灰色かび病に防除効果を示すことが確認できた。さらに、緑色光の照射は病害防除効果だけでなく、イチゴの果実肥大促進やダニ防除にも効果があることが明らかになった。本システムは『みどりきくぞう』と命名し、イチゴ向けシステムとして商品化したが、今後は様々な農作物への適用が期待される。

 

 
 

山本 敬司

株式会社四国総合研究所

水産物の鮮度保持には、漁獲時点から出荷までの間の鮮度保持が非常に重要である。従来、漁獲時点(船上・海上)の鮮度保持として一般的に船槽へ淡水氷を投入して冷却していたが、温度管理が難しく、塩分濃度の変化や魚と氷との接触による水産物の損傷などが鮮度低下を招いていた。本システムは割安な夜間電力を利用して夜間に自然海水を「氷」として蓄熱し、供給時に自然海水で解凍して氷温域の海水を供給するもので、大幅なランニングコストの低減をはかることができるほか、魚と氷の接触による損傷も無く塩分濃度の変化も少ないため高い鮮度保持効果が期待できる。

 

 

石崎 秀昭

中国電機製造株式会社

年々深刻化するヒートアイランド現象の緩和やCO2を削減するため建物の屋上を植物で覆う屋上緑化システム(商品名:プレーリールーフ)を紹介する。
当社の屋上緑化システムは、プランター型の栽培槽に「常緑つる性植物であるヘデラ」の苗を植栽し,水耕栽培により育成させるものである。水耕栽培のため培地に土を使用していないので、重量が軽く、雑草が生えない特徴がある。また、自動潅水(かんすい)システムにより、維持管理に手間がかからないシステムとなっている

 

 

守谷 栄樹

中部電力株式会社

比較的低コストの温室の冷房方法として、強制換気と細霧冷房を組み合わせた強制換気式細霧冷房システムを考案した(特許出願中;特願2007-126412)。本システムでは、温室の片側妻面に水平配置した複数の排気用換気扇、それと対向する妻面に吸気部を兼ねた細霧室を設け、細霧室内の細霧の噴霧面には目合い1.4mmの吸水性寒冷紗、細霧室と栽培室との境界面には目合い0.2〜0.4mmの防虫ネットをそれぞれ平行に展張した。吸水性寒冷紗に細霧(平均液滴径約30μm)を連続的に噴霧しながら換気扇を稼働することによって、細霧室内に吸引した空気が湿球温度近くまで低下し、高温期において温室内を外気温以下にすることを可能にした。また、本システムをイチゴ促成栽培(9月定植、11月上旬から収穫)に適用した結果、1月までの早期果実収量が約2倍、5月以降においては果実肥大の効果が加わり、年間果実収量が約5割増加する効果が確認された。

 

 
 

永利 隆昭

九州電力株式会社
 

環境にやさしく、安全・安心な魚を計画的に安定生産でき、かつ、陸上の軽作業が中心となることで就労者対象人口の拡大が図れるなどの利点がある閉鎖循環養殖システムについて換水率を極限まで低減できる技術を開発した。
ヒートポンプによる最適水温の養殖で、期間短縮と夏季でも白子が入った良質なトラフグ出荷が可能になり、実証の結果、事業採算性の見通しがついたのでその概要を報告する。

 

 

 

中原 光久

九州電力株式会社

国内の野菜・花き栽培は、園芸農産物の需要・消費の拡大に対応するため、周年供給体制の確立、機械化・省力化の推進など急速に技術的な進展を図ってきた。近年、特に企業的な農業経営手法を取り入れ、経営規模も拡大の傾向にある。一般的に苗生産はハウスを使用して育苗される事が多いが、季節や天候により苗の生育に左右されるため、その対応策として人工環境調節下で、効率的に苗生産が可能な「閉鎖型苗生産システム」の開発・試作を行い、機能評価を実施した。省エネのため、冬季の照明点灯時及び中間期は積極的に外気導入とした。育苗棚内の照明熱負荷対策として苗部と光源部は分離空調方式を開発した。また、苗面の風速制御は、インバータを採用し、植物の適環境に制御できた。

 

 

【ヒートポンプ給湯講座】
 

杉村 允生

Q研技術士事務所

代表取締役

 

 

【特別寄稿】
 
 

伊藤 拓也

三菱電機株式会社
 

大塚 修

三菱電機株式会社
 

大越 靖

三菱電機株式会社
 

近年、ヒートポンプチラー(非蓄熱熱源機)においてCO2排出量削減を目的とした機器の性能向上が進められており、氷蓄熱ユニットについても今後の普及拡大に向けて省エネルギー性能の向上が求められている。
氷蓄熱ユニットは電力負荷平準化への効果が大きく、国土交通省「建築設備技術基準」に氷蓄熱ユニットに関する記述が追加されるなど今後の普及促進が期待される状況にあり、普及加速の観点からシステム構築の容易性に対する要望がますます高まると考えられる。
このような背景の下で、氷蓄熱ユニットの性能向上及びシステム構築の容易化を図った新形高効率氷蓄熱ユニットを開発した。新形機は従来機に対して冷房蓄熱COPで51%、冷房追い掛けCOPで34%の省エネルギー性の向上を達成した。また非蓄熱熱源機との混在システムに対応可能なコントローラ開発によりシステム構築の容易化を図った。

 

 

 

戸草 健治

日立アプライアンス株式会社
 

現在、工場における空調はまだまだ送風機スポットエアコン等による局所的なものが一般的となっているが、作業空間の快適性や導入の簡便さの観点から、パッケージエアコンでより広い範囲の空調を行うニーズが高まってきている。しかしながら、設備用パッケージエアコンを利用した混合空調方式では、天井が高く広い空間の建屋全体の空調を行うことになり、運用コストがかさむことになる。 また、環境配慮への意識の高まりもあいまって、より低コストで環境性に優れた高効率な空調システムが求められている。
そこで今回、広い建屋内の必要なエリアだけを部分空調する効率的な運転が可能で、省エネ性やCO2排出削減性にも優れた置換換気空調用パッケージエアコンを開発した。本稿では、置換換気空調用パッケージエアコンの概要、特長について紹介する。

 

 
 

吉田 睦

富士電波工機株式会社
 

弊社ではマイクロ波加熱装置用として、新たに半導体式マイクロ波電源を開発した。
周波数は2.45GHz、5.8GHz、10GHzの3周波数帯を対象としており、周波数や出力を任意に可変出来、変調を加える事が出来る。最大出力は500Wである。
またこれらのマイクロ波電源の専用アプリケーターとして、共振器を使用したキャビティ型アプリケーターも同時開発した。対象物は金属粉体・石英を含む各種ガラス・セラミックス化合物・各種フェライト・SiC・カーボン等であり近年、太陽電池や燃料電池の各種部材として用いられる事が多い。
これらの物質は、従来電熱炉等の外部加熱による加熱処理が一般的で有ったが、ナノ粒子化に伴う均一な加熱・反応、凝集等に問題が有り、問題解決が望まれていた。
装置の対象ユーザーは企業や大学・公的機関等の研究・開発部門向けであり、使用目的は各種電池材料の開発・化学合成・反応・低温焼成・乾燥・プラズマ処理等の実験用である。

 

 

【会員紹介】
 
 

日野 宏昭

昭和鉄工株式会社
 

弊社は、創業が明治16年(1883年)で、本年10月2日で126周年を迎えた。弊社は、「蒸気消毒器」の製造開始とともに創業を始め、草創期の消毒器に始まる「熱」を取扱う技術を暖房装置へと継承し、以来、取扱う技術と商品群を増やしてきた。「誠実を造り誠実を売る」という理念のもと、都市生活の基盤となる快適な生活環境創りを目指して商品開発を行ってきた。弊社の創業から現在までの歴史と商品群を振返るとともに、現在の主な製品を紹介したい。