エレクトロヒート No.166
巻頭言
【特集】業務用電化厨房の最新事例
種田 由紀子
有限会社宮川フードサービス研究所
厨房先進国ドイツ・フランスでは職場としての業務用厨房が発達している。それぞれ機器単体が働き手サイドから操作性・清掃性・デザイン性などをとりこんでいる。その上で、そうした機器を生かした職場としての業務用厨房づくりを探求している。一つは快適な作業環境であり、これにはケガ・火傷の防止から温湿度、採光、防音等への配慮がみられる。もう一つは衛生管理のしやすい施設設備である。レイアウトやエリア区分はもちろん、ゴミの溜まらない、或いは溜まっても手入れのしやすい技術をそこここに導入している。さらにデザイン性にも磨きをかけている。欧州のこうした展開は、日本での課題を示唆し、将来の業務用電化厨房の方向性を明示している。
渡辺 彰
新調理システム推進協会
オール電化厨房のイベントで多々見受ける「新調理システム」は、国内で誕生して20年を迎える。この新調理システムの骨格を作った真空調理法が北欧で誕生し40年。国内に伝来し時代の景気や行政指導の変遷に左右されるなか、国内の新調理システムは現在も成長し続けている。20年前、電化厨房と新調理システムの相性の原点となる国内初の電化厨房をホテルに導入した筆者が、現代の新調理システムについて詳しく解説する。
杉田 勝彦
東京電力株式会社
電化厨房は排熱が少なく厨房を清涼・快適に保てることや、燃焼に伴う煤や水蒸気の発生がなく掃除もしやすいことから清潔であり、さらに、温度管理や調理時間の設定が容易で制御しやすい等のメリットがあるため、外食レストランや学校給食施設など様々な施設に普及が進みつつある。欧州ではすでに電化厨房の普及が進んでおり、衛生管理の徹底や労働環境向上を追求した施設が多く存在する。日本エレクトロヒートセンターでは、毎年、欧州の電化厨房の視察を企画しており、2008年はヨーロッパの最新機器が集結するホガテック展や、ドイツの電化厨房施設の視察が行われた。本稿では、2008ホガテック展におけるドイツの最新機器、ならびに、今回視察した先進の電化厨房施設について紹介する。
岡野 秀紀
関工不動産管理株式会社
当プロジェクトでは設計、許認可、工程、建設コスト、近隣対策まで建設全般の統括を担当した。お届け弁当工場の特殊性は生産が毎日の注文に応じ量と内容が大幅に変動することにある。施設はその変動への対応が要求される。適切な機器選定や運転制御を行い過剰な設備投資や無駄な運転を避ける必要がある。その生産体制を分析しコストとクオリティーをバランスさせることに腐心した。電化厨房の一事例として参考にして頂ければと思う。
西畑 尚
中部電力株式会社
坂本 光平
株式会社伊藤建築設計事務所
近年、厚生労働省の行政指導や消費者の食に対する安全意識の高まりに伴い、HACCPの導入、衛生管理やT.T管理の面でも電化厨房のメリットである「快適性」、「清潔性」、「操作性」、「生産性」による作業環境性の改善が重要となっている。また、厨房にはエネルギー消費機器が集中しており、環境・省エネルギーの面からも厨房におけるエネルギー消費量を把握し適切な管理をすることはますます重要となっている。しかし、その実態については、なかなか把握しきれていないのが現状である。適切な省エネルギーを進めることは、環境への負荷を小さくするだけでなく、エネルギーコストの削減にもつながり、企業収益の増大に寄与することとなる。そこで、本稿ではお客さまの協力の下、可児プラザを対象として、厨房の作業環境性、エネルギー消費量等について計測・分析・検証し、得られた知見について報告する。
清水 直之
ホシザキ電機株式会社
近年、最も重要な社会問題として叫ばれている地球温暖化問題がある。
京都議定書においても温室効果ガスの削減が約束されたように、国際レベルで温暖化防止へのプロジェクトがおこなわれている。
ホシザキ電機においては、創業以来受け継がれてきた企業理念「良い製品は良い環境から」に基づき、『ホシザキエコプラン』を始動。
早期から環境問題に取り組み、経済活動としての社会貢献だけではなく、環境という側面からも製品を見つめなおし、業界初のインバーター制御を搭載した業務用冷蔵庫・冷凍庫の発売をはじめとして、各製品にわたり省エネ機器の開発に取組んできた。
川瀬 誠
東北電力株式会社
電気式回転釜は,焼物,炒物,煮物からソース,スープなど多種多様な調理が可能であり,大規模学校給食センター,ホテル,病院・福祉施設等の大量調理を行なう厨房で威力を発揮する万能調理器である。しかし,既存製品は釜容量が少ないことから,必要台数を確保するには,作業人員,設置スペース,導入コストが増えるため,食数の多い施設では釜容量の大きいガス式や蒸気式が選択される傾向にあった。
そのため,既存最大容量を上回り,電化厨房普及の一助となる「大容量電気式回転釜」を開発することを目的として研究に着手した。本稿では,2年間の研究期間を経て,本年6月に製品化された機器について,開発の経緯,性能試験結果,今後の展開等を紹介する。
新谷 和久
ニチワ電機株式会社
厨房に必要不可欠な調理機器であるスチームコンベクションオーブンについて、消費電力や使用水量などで省エネ性を大幅に向上させ、さらに操作性を高めた省エネ型スチコンを中部電力(株)とニチワ電機(株)とで共同開発した。
蒸気を安定的に発生させることが可能な新方式蒸気発生システムを開発・採用し、庫外の蒸気発生装置をなくすことに成功した。また、排熱回収装置を設置することにより、新方式蒸気発生システムへの温水供給を可能にするとともに、冷却水の使用量を大幅に削減できた。
これらの工夫により、実調理テストデータから年間消費電力量を約4割削減し、年間使用水量を約7割削減させ、1台当たり年間で3.8トンのCO2排出量の削減が期待できる。
野添 真一
プロイ株式会社
弊社では、シャープ株式会社のマイクロ波炊飯機の炊飯シーケンスを開発する事で、この機械の特徴である加熱時の温度維持と安定性を最大限に活用し、大幅なコスト削減と炊飯米のレベルアップを可能とした。具体的には、炊飯歩留まりの大幅アップ,食味の向上,炊飯後の劣化低減,水漬を含んだ炊飯時間の短縮,各種炊き込みの安定炊飯,厨房環境の向上等を実現させた。ここでは、シーケンス開発による効果をその理論と共に簡単に説明させていただく。
白鳥 茂人
中部電力株式会社
中部電力では平成22年度末までに厨房・空調分野で80万kWの需要造成を目標に掲げ活動をしているが、電化厨房の普及の切り札として期待されているのが「the Professional Kitchen Studio」(以下、キッチンスタジオという。)。平成20年2月29日に株式会社ユーハイム様と提携し、ユーハイム様が運営するカフェレストラン「ユーハイム中日店」内に業務用電化厨房のPR施設をオープンさせた。厨房内には、IHコンロ、スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、グリラー、サラマンダー、マイクロ波炊飯機等の厨房機器が機能的に、コンパクトに設置されている。今回は、このキッチンスタジオでの取り組みについて紹介する。
ヒートポンプ給湯講座
特別寄稿
斉藤 真輝
株式会社東洋製作所
当社では冷温水を熱源とする業務用空調機を主体に製造・販売してきたが、近年、業務用室外機を使用した直膨用空気熱交換器を内蔵したヒートポンプ式空調機の製造も多くなってきた。今回は空調機に室外機を内蔵し、機器の一体化・コンパクト化を図り、さらにヒートポンプサイクルの放熱に室内からの還気を利用するヒートポンプ式空調機『ダイレクトX』を主にヒートポンプ式空調機について紹介する。
会員紹介
川合 誠治
メトロ電気工業株式会社
創業からの長い歴史の中で震災や戦争を経験し、幾多の困難を克服してきた。創立後は白熱電球を中心に事業を続けてきたが、エジソンが発明した電球の基礎技術は今でも生きている。白熱電球は蛍光管やHIDランプ、LEDなどが開発され、現在では極めて効率の悪い光源となったが、暖房用赤外線電球を始めハロゲンヒーターやカーボンヒーターは電球製造技術が基礎になり開発された熱源である。わが社は光源と熱源及びその応用商品という、シンプルでローテクな商品を製造し続けてきたが故に60年間継続できたのではないか。このような視点でわが社の沿革と主な商品を紹介している。