エレクトロヒート No.163
巻頭言
【特集】環境・省エネルギー
原 正幸(はら まさゆき) (財)省エネルギーセンター 教育部長
「改正省エネ法」は平成20年5月30日に、「改正温対法」は同じく6月13日に公布され、平成20年度中には政省令・告示等が公布される運びである。本稿では改正点の概要について、執筆時点までの審議会等の公表資料から追加情報を加えて解説した。
工場・事業場に係る省エネルギー対策の強化
住宅・建築物に係る省エネルギー対策の強化
排出抑制等指針の策定
政令市、中核市、特例市が自然エネルギー導入の促進、地域の事業者、住民による省エネその他の排出抑制の推進等について、地方公共団体実効計画を定める。
省エネ法について、2010年4月以降、全社のエネルギー総使用量の報告をしなければならない。そのため、2009年4月から1年間、月ごとの電気・ガス等の使用量から、全社のエネルギー使用量を把握して集計する作業が必要になる。
杉山 大志(すぎやま たいし)(財)電力中央研究所 上席研究員(IPCC第四次評価報告書主執筆者)
今中 健雄(いまなか たけお)(財)電力中央研究所 主任研究員
洞爺湖サミットの重要な成果として、「温暖化問題とは、温室効果ガスの長期的な大規模削減を要する問題である」という認識が浸透した。「2050年までに温室効果ガス排出半減」といったような大規模な削減をするためには、電気利用を推進して直接燃焼を代替し、かつ発電部門のCO2原単位を下げるという方法が最も有望である。今後の日本の温暖化対策は、これまでの省エネルギー政策の実績を踏まえつつも、電気利用を長期的に推進していくように戦略を再編すべきである。この実現のために関係者が共同で作業すべきこととして、長期的なシナリオとロードマップの作成について述べる。温暖化対策において電気利用が果しうる役割の大きさについては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に参画したシナリオ研究者の間でも、認識が共有されつつあるが、なお一層の活動強化が必要である。他方で、電気利用拡大のロードマップを作成することが、具体的な政策に影響を及ぼす活動として有益と思われる。
太田 嘉治(おおた よしはる)(財)ヒートポンプ・蓄熱センター 業務部 課長
地球温暖化対策に向けて有望な選択肢となるのが、ヒートポンプ・蓄熱システムであるが、まず最初に、ヒートポンプ等に関する認知度調査の結果を紹介している。今後の普及促進に向け現状を把握するために実施したわけであるが、その結果では、ヒートポンプの認知率は3割程度と思ったほど高くないというのが現状である。
こういった認知現状のもと、最近のヒートポンプの普及状況として、京都議定書目標達成計画に掲げられているエコキュートと業務用高効率空調機の市場普及状況について報告をしている。エコキュートについては、2008年11月に累計出荷台数が150万台を超え、一方、業務用高効率空調機でも、2008年3月累計で53万冷凍トンを超えた。京都議定書にも取り上げられるエコキュートと業務用高効率空調機であるが、その理由はヒートポンプのCO2削減ポテンシャルにあり、日本のCO2総排出量の約1割、1.3億トンにも相当し、非常に大きなCO2削減の可能性を秘めている。CO2削減ポテンシャルの大きなヒートポンプであるため、日本政府としてもその普及に期待を寄せており、日本のどのような政策に取り上げられているのかを紹介している。さらには、ヒートポンプと組み合わせるとパーフォマンスの上がる蓄熱システムについても、地下鉄の副都心線への導入事例紹介や、先導的負荷平準化機器導入普及モデル事業で採択された案件の概要について報告している。このように、日本国内や世界でも期待され普及してきているヒートポンプであるが、最近の話題として、ヨーロッパの再生可能エネルギー利用促進に関する指令案ついても紹介している。ヒートポンプによる熱エネルギーも再生可能エネルギーの中に含める等の提案がなされている。最後に、国内にヒートポンプをさらに普及するためのスローガン「Let'sヒートポンプ!グッと快適、もっとエコ」を紹介し、地球温暖化防止対策として実効を上げるには、ヒートポンプ・蓄熱システムのさらなる普及啓蒙が必要であるとまとめている。
今井 有俊(いまい ありとし)日本自然エネルギー(株) お客さまサービス部 部長
2008年4月から京都議定書第一約束期間が始まり、産業界をはじめ個人レベルにおいても本格的な地球温暖化防止に向けた取り組みが開始され、様々な方策がある中、最近はグリーン電力証書に注目が集まっている。グリーン電力証書は、再生可能エネルギーの普及拡大方策として、需要家側が参加できる唯一の方法として理解されはじめ、国や自治体においても施策に取り入れる動きがでてきた。今回は、グリーン電力証書の全般と今後の展開について述べていきたいと思う。
野々下 知泰(ののした ともやす)ネポン(株) 農用推進部 技術担当部長
施設園芸用ハウスの暖房は、従来、専らA重油に頼っていたが、最近の燃油価格の高騰に端を発して急速に普及しつつある「ヒートポンプとのハイブリッド暖房」によって省エネルギーが実現できることや、施設園芸用ヒートポンプに求められる要件について説明する。今後、燃油価格がどのように変動するか不透明な部分はあるが、基本的にはヒートポンプを省エネルギー、脱石油、二酸化炭素排出量削減を実現する強力な周年環境制御機器と位置づけることができる。
大島 啓一朗(おおしま けいいちろう)(株)アイエイアイ 営業部 営業技術課 技術支援グループリーダー
産業部門におけるCO2排出量削減努力への要求・期待度は年々高まっている。これに貢献すべく、株式会社アイエイアイではお客様生産設備のエアレス化(→電動化)による「CO2排出量削減効果」、「製造コスト削減効果」を提唱している。エアシリンダを用いた設備を電動化する際には、現在の設備の問題点を十分に把握した上で、生産効率、品質向上を考慮し設備設計をすることが重要である。近年、電動シリンダ価格は、エアシリンダ価格に対し非常に近くなっているが、エアシリンダが使用された生産設備をそのまま電動に置き換えるのではなく、機能性を持たせ省力化を図る事により、設備イニシャルコストの飛躍的な低減を果たす事も可能である。「儲かる生産設備」+「CO2削減に貢献する生産設備」の導入に弊社製品をご活用頂ければありがたい。
太田 明子(おおた あきこ) パナソニック電工(株) インテリア照明事業部
地球温暖化防止は、今や全ての人が真剣に取り組まなければならない問題であり、温暖化の原因のひとつであるCO2の削減を早急に進める必要がある。住宅における電力消費の割合において、照明は2番目に大きな割合を占めており、この部分での省エネルギー光源として注目されている「LED照明」について紹介する。LED照明は、長寿命などの優れた特長を有しており、現在ではさまざまな分野で活用されている。省エネ性能においても既に白熱灯の効率を越えており、あと数年もすれば蛍光灯を上回ると言われている。絶対的な明るさやコスト面では課題が残っているものの、地球環境保全という意味合いを考えると、LED照明器具が急速に普及する可能性は高い。
白坂 行康(しらさか ゆきやす)(株)日本AEパワーシステムズ 変圧器事業部 設計部 主管技師
棚次 亮太(たなつぐ りょうた)(株)日本AEパワーシステムズ 変圧器事業部 モールド変圧器部 技師
変圧器は,効率的な大電力輸送のための昇圧,使用し易い電圧への降圧,また電力ネットワークの構築など,電力送配電システムの要である。本稿では,変圧器が1885年に発明された由来からその技術変遷および変圧器で発生する無負荷損失や負荷損失など各種損失項目の詳細内容と低損失化技術を説明している。また,省エネ法の特定機器に指定され,省エネ基準のトップランナー対象製品であるモールド変圧器の低損失化技術とその効果を記述した。電力用変圧器の効率は一般に99%を超えて非常に高効率の製品であるが,より一層の低損失化が図られている製品でもある。
河野 正志(かわの まさし)富士電機システムズ(株) 技術開発本部パワエレ開発センター開発第一部 次長
高圧マルチレベルインバータはパワーエレクトロニクス応用製品の中では比較的新しく,世界的に見ても製品化されてまだ15年程度である。当社は1999年に発売を開始しこれまで500台以上の納入実績があり,今後さらに国内外への拡販を進めていく。製品は3.3kV(280~5200kVA),6.6kV(470~10500kVA),10kV(1200~2300kVA)系列で,センサーレスV/F一定制御とベクトル制御の2タイプがある。又,豊富な機能(同期投入解列、瞬時停電対応、同期電動機駆動)を選択でき,ファン,ポンプ,ミキサー,圧縮機等の多方面に使われている。
坂口 智健(さかぐち ともたけ)(株)日立産機システム 空圧システム事業部 汎用圧縮機設計部
空気圧縮機の省エネルギー化を図る際、圧縮空気を使用するシステム側と圧縮機側の両方を考える必要がある。システム側については、使用圧力の適正化や配管接続部からの漏れを早期に発見し対処するなどの取組みが必要である。圧縮機側については、負荷変動に応じて圧縮機回転数を変化させるインバータ搭載型可変速機の導入が最も効果的である。当社では、高効率の永久磁石モータを搭載し一層の省電力化が可能な「HISCREW NEXTシリーズ22/37kW」可変速機をラインナップしている。複数台の圧縮機を使用する空圧システムにおいて、その内1台以上を可変速機に置き換えることで、大きな省エネ効果を上げることができる。油冷式圧縮機の潤滑油は、圧縮工程における空気の冷却やロータ間漏洩の抑制など過酷な条件下で使用されるため、一層の耐久性向上が求められる。また、環境保護の観点から、充填油量や消費油量の削減も今後の大きな課題である。
山下 植也(やました たつや)三機工業(株)技術開発本部 研究開発部 建設設備グループ マネージャ
山本 浩也(やまもと ひろや)サントリー天然水(株)奥大山ブナの森工場 エンジニアリング部
山陰地方にある大山隠岐国立公園の南側に位置するサントリー天然水・奥大山ブナの森工場は、ミネラルウォーターのペットボトル容器成型から充填包装・品質管理までを一貫して行なっている。環境配慮を最優先するために、高温度から低温度までの温熱を一貫して利用する「熱のカスケード利用」を計画した。そのため、屋外に放出されていた温排熱の一部を定置式の潜熱蓄熱システムを利用して蓄熱し、低温度の事務所空調や生産ラインに再利用している。排熱の回収利用は省エネルギー、CO2排出抑制の観点からも有効な手段である。同工場に導入した潜熱蓄熱システムの概要と運転実績について紹介する。
ヒートポンプ給湯講座
特別寄稿
阿部 信雄(あべ のぶお)日立アプライアンス(株)
空調営業本部 営業推進統括部 営業支援部長兼事業監理センタ長
現在、私は日立アプライアンス(株)に在籍し、製品拡販のための営業・技術支援、多様化するシステム製品の品質管理・建設業法他、関連するコンプライアンスの周知徹底を図る業務をしています。初めての入社は、昭和43年に大阪日立冷機(株)で、入社以来、大阪市交通局の駅舎(居室含)冷房、関連する事務所、バス営業所他の空調機製作・据付工事・保守整備を、32年間に渡り実施させて戴きました。この事は、大阪市交通局のまた先輩の方々のご指導のおかげであると心より感謝しております。
その時のあらゆる不具合対策の経験と顧客ニーズに基づき開発いたしました「水冷式パッケージエアコン(床置)」・「3コンポマルチ空調機」についてご紹介いたします。
会員紹介
林 靜男(はやし しずお) 富士電機サーモシステムズ(株) 代表取締役 社長
宇都 克哉(うと かつや) 富士電機システムズ(株) 産業電源技術第二部 部長
篠永 春彦(しのなが はるひこ)富士電機システムズ(株) 産業電源技術第二部 主任
富士電機システムズ(株)グループでは長年培ってきたパワーエレクトロニクス技術、エンジニアリング技術により鉄鋼、化学、電機、食品、半導体など幅広い産業ならびに社会インフラ分野において最適な電機ソリューションサービスを提供しております。そのなかでも電気加熱分野である「アーク加熱技術」・「誘導加熱技術」の当社の取り組みと、当社の技術・製品を紹介致します。当社は電気加熱分野においても高性能で且つ信頼性・保全性・使用性・経済性に富んだ最適電源システムの構築トータルソリューションを実現致します。