エレクトロヒート No.178
【挨拶】
【特集】ヒートポンプシステム特集Ⅱ(排熱回収・給湯)
橋垣 和美
株式会社中電工
山口東部支社
「スポーツクラブアクア」は、既設建物(プールのみ)をプールとフィットネスクラブおよびデイサービス併用の建物に改修し営業を行っていたが、近年の原油価格の高騰と設備の老朽化によるランニングコスト増加を抑制するため、今回設備改修に至った。設備改修の概要としては、新築時から設置されていた灯油焚真空式温水機主体の給湯システムに、循環加熱型の空気熱源ヒートポンプ給湯機を設置し、ハイブリッド給湯・蓄熱システムに更新したものである。更新後のランニングコスト(平成21年9月~平成22年2月)は試算値を上回っており、ハイブリッド給湯・蓄熱システムの優位性を示すことが出来た。
柴田 智史
イシバシエンタープライズ株式会社
大阪営業所 所長代理
ヒートポンプを用いた給湯システムはお湯を多量に消費する病院、老健施設、宿泊施設、温浴施設等ではCO2冷媒の業務用エコキュートの発売以降、導入件数も順調に増加している。家庭用エコキュートもテレビCMの効果もあり広く社会に知られる存在となった。一方製造業のプロセス分野へのヒートポンプ給湯システムの導入事例の公表は、サービス業のそれと比較して、まだまだ数が少ないように思われる。本稿では電気機器製造工場で部品のメッキ加工に用いられるメッキ槽及び洗浄槽へのヒートポンプを利用した加温システムを紹介する。
前原 則保
三菱重工業株式会社
冷熱事業本部 大型冷凍機部 主席技師
坂井 正頌
三菱重工業株式会社
冷熱事業本部 大型冷凍機部 設計課
飲料製造プロセスでは、低温水を冷凍機による冷却、高温水を蒸気による加熱で製造し、さらに中温水を各プロセスからの戻り水で製造していることが多い。以前は温水ヒートポンプの温水出力レベルは、55℃程度が上限であったため、高温水の製造に利用することが出来なかったが、近年の技術進歩により90℃までの温水を出力できるようになり、飲料製造プロセスの循環水システムへの適用が可能となった。当社の熱回収温水ヒートポンプについて、サントリープロダクツ(株) 高砂工場様へ導入した事例をとおし、システムフロー、経済評価、CO2削減効果を紹介する。また一般的な適用可能なプロセス、適用条件なども紹介する。
前田 宏幸
株式会社ショウワ
本社 営業部 主任
従来、洗浄業界では「蒸気」及び「電気ヒータ-」による加熱が主流である。業界により偏りはあるものの、食品等の衛生面を重視した業界では蒸気を、自動車等の金属部品洗浄を目的とした業界では電気ヒーターを主に熱源として使用する。蒸気の場合、主に化石燃料を熱源としており、現在の中東情勢等を背景に原油高傾向にあり、且つ環境負荷係数も高く、CO2排出量も問題になっている。電気ヒーターの場合、環境負荷係数は低いもののヒーター容量が大きく、ランニングコストもさることながら、ユーティリティ設備費用もかかる。 また常時排水が必要な洗浄の場合は、一般的には電気ヒーターの使用は困難である。そこで、弊社は単にヒートポンプを活用するに留まらず、装置構成の革新を図り、4LESS(Low running cost・Ecology・Small・Silent)を達成した洗浄機の開発に至った。
中西 俊成
木村化工機株式会社
エンジニアリング事業部 工学博士
島本 正倫
木村化工機株式会社
エンジニアリング事業部
化学産業における省エネルギー化は益々重要になっており、その努力は社会的責務といえる。当社は化学装置の設計、製作、現地工事を行っており、省エネルギー技術に積極的に取り組んでいる。本稿では、多重効用型蒸発装置、熱圧縮機型蒸発装置、MVR型蒸発装置、膜分離装置を組合せた蒸発濃縮装置、蒸留装置にMVRを組合せた溶剤回収装置、HIDiC(内部熱交換型蒸留塔)について紹介し、最後に蒸発濃縮装置へのヒートポンプ適用について述べる。
冬野 博昭
東芝キヤリア株式会社
システム技術部 中部システム技術担当
生産工程における洗浄装置においては、従来洗浄液の加熱に電気ヒータや蒸気ボイラ等が用いられており、省エネ・環境対応が求められていた。そこで、日本および欧州委員会(EC)により再生可能エネルギーとして定義されている空気熱を熱源としたヒートポンプを搭載した産業用洗浄装置を試作し実証試験を行なった。その結果、運転コストと二酸化炭素(CO2)排出量とを大幅に低減することが可能であることが実証されるとともに、ヒートポンプ方式に代替する際の洗浄液の温度、昇温に必要な時間、運用方法や改善点等の知見が得られたので、実測試験データを交えて紹介する。
中山 浩
中部電力株式会社 技術開発本部 エネルギー応用研究所
都市・産業技術グループ 研究副主査
工場の生産プロセスにおける機械部品の洗浄液の加温には電気ヒータやボイラ蒸気が使用されている。この洗浄液加温を高効率に実現できる「洗浄工程用ヒートポンプ」を開発した。「洗浄工程用ヒートポンプ」は、ボイラ蒸気による加温方式に比べ、大幅なエネルギー消費量やCO2排出量が削減できる。また、洗浄液の加温時に出るヒートポンプの冷排熱を利用して、切削液の冷却を行う冷却・加熱兼用型(排熱回収型)を使用することで、さらなるエネルギーの有効利用を図ることが可能である。本稿では開発機の概要を述べるとともにフィールド試験結果を紹介する。
〈大型エコキュートの改善改良と給湯システム全体の高効率化〉
片岡 昌樹
株式会社前川製作所
商品化実行センター
今後、ますます普及していく電化給湯システムにおいて重要な点は、システム全体の設計・施行が容易なこと、システム全体として高効率で省エネルギー性が高いことである。そのために当社では、ヒートポンプ給湯機自体の効率向上ならびにヒートポンプ給湯機を効率よく運転制御させる標準システム制御盤の開発をおこないパッケージとして4月から発売開始した。本稿では、このパッケージについて紹介する。
【ヒートポンプ給湯講座】
【特別寄稿】
田村 真紀夫
一般社団法人 膜分離技術振興協会
膜協会ジャーナル編集長
膜分離技術はここ数十年で発達した比較的新しい単位操作であり、薄い膜の裏表に圧力差や濃度差、電位差を与えることで機能する非常にシンプルな分離操作である。応用用途としては、海水淡水化や水道水・純水製造、排水処理などの水処理や食品産業などの液体系の分離から、アルコールと水の分離、さらに空気、水素、二酸化炭素等の気体分離にも広がり、小型から大型装置まで多くの実用例がある。本項では膜の分類、形態、製膜方法、運転方法などの基礎知識から実際の応用例まで、主に水処理を例として紹介したい。
【会員紹介】
伝熱シミュレーションによる均熱加熱制御を可能とした熱処理電気炉
平山 聖治
熱産ヒート株式会社
技術グループ
熱処理を必要とする製品にとって品質向上のため均熱性を高めることは重要な要素である。現状の熱処理電気炉は、雰囲気もしくは直接ワークに取り付けられた熱電対から得られる限られた部分の領域の温度を均一に制御する方式が主流であり、その温度域が均一に制御されたからといって実製品のすべての箇所の温度が均一になっているという確証はない。今回開発を行っている熱処理電気炉は、前述の雰囲気制御もしくは、処理物の表面温度制御とは異なり、実製品の熱処理時に伝熱シミュレーションを行い、実製品の全体の温度分布を把握し、かつ均熱化を強く促すために数分先の温度分布の予測も行い、あらかじめ温度差が発生すると判断された場合には、温度差を抑制する方向にヒーター電流制御及び温度の制御を行う画期的な新システムである。これにより、必要最低限の時間・エネルギーで熱処理が可能となり、省エネ・省力効果も期待できる。
【寄稿】